がんと診断されたら ―心を落ち着かせる3のポイント―

がんと診断されたら… 闘病のヒント

理不尽なことに、病はあなたのライフプランとは無関係にやってきます。
ましてや「がん」と診断されたあなたは、どうなるのかも分からない不安と恐怖を感じているかもしれません。

わたしは20代の独身で血液がんに罹患しました。
闘病経験と看護師としての経験、患者さんを支援してきた立場から、まずはがんと診断されたときに、心を落ち着かせる3つのポイントをお伝えします。

今は、混乱していているかもしれませんが、一つずつ進めることで、気持ちの整理ができるはずです。

「がん」と診断されたとき

ポイントは、ショックからいち早く抜け出すこと!

がんと診断されたときに、頭が真っ白になったり、ショックや恐怖に襲われたりするのは当たり前のことです。
現実に適応するために大事な時期です。
ひとりで抱えこもうとせず、家族や信頼できる友人を頼りましょう。

わたし自身は告知を受けた病院からの帰り道、いつもの電車を乗り間違えるほど動揺していました。
その晩は友人を呼び、不安と恐怖で泣き続けていました。

しかし、ショックを受け思い悩む人には一つの傾向があります。
それは、がんの告知以外、前後の生活が大きく変わらない人だ、ということです。
身体の不調を多少は自覚していたかもしれませんが、
あなたにとって「まさか」という状況の人ほどショックが大きいのです。

わたしは健康診断後の診察でがん告知を受けた「まさか」派です。

また、がんと診断されたのに、何もしないことが治療(経過観察)ということがあります。
治療をしている患者にとっては、なんとも贅沢な状況です。
ずっと現状維持もありうるという状況にも関わらず、あえて不調を作り出し、病院を無駄に渡り歩く患者さん、というのも患者支援の中で経験します。

例えば、交通事故にあったとき。
脳梗塞や心筋梗塞など、死に直結するようなけがや病気にあったとき。
事故や病気になったことにショックを受け、不安や恐怖におそわれるでしょうか?
すぐに治療やリハビリが始まるので、そんな余裕もないのです。

治療を急ぐ必要がなく、時間にも身体にも余裕があるから不安になる。
とは言え、がんと診断されたあなたは、準備することが沢山あります。
不安にかられる時間に費やすよりも、次につながる行動を。
行動をすることで、不安や恐怖も変わっていくものです。

「がん」=「死」の時代ではない

日本人が、一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人と言われています。
一方で日本人が、がんで死亡する確率は男性26.7%(4人に1人)、女性17.9%(6人に1人)。
つまり、がんと診断されていても、がん以外の理由で亡くなることが多い、ということが言えます。(2020年のがん統計のデータに基づく)

がんの種類やその進行具合がどうか、という違いはあります。
しかし、がんと診断された5年後に日本人全体と比較してどれくらいの生存率かを示す5年相対生存率は65%前後。
治療の進歩により、がんと上手に付き合いながら日常生活を送れるようになってきています。

がんと診断されても、治療を続けながらも変わらない日常生活を続ける方も多くいます。
薬を飲み続けながら「がん」とうまく共存する、高血圧や糖尿病などの「慢性疾患」と何ら変わらない、という「がん」が存在するのも事実です。

わたしのがんは、現在も完治する治療法が確立していません。
治療しても治ることがない、と悲嘆していました。
そんなとき、尊敬する看護師の先輩が言葉をくれました。

「治療法がないなら、あんたが証明して学会で発表しなさい!」

その時から18年が経過しました。
自らではありませんでしたが、先生が学会で発表してくれました。

統計データはパーセント(%)ですが、あなたにとっては0(ゼロ)か100かです。
がんと共にある人生を、あなたはどうしたいですか?
実は、全てあなた次第なのです。

ひとりで闘おうとしない

がんと診断されたあなたは、もしかしたら、こう考えているかもしれません。
・家族に迷惑をかけられない
・職場に言ったら、不利になることがあるのではないか
・どうせ、分かってくれるはずがない
・気を遣われたり、哀れに思われたりしたくない

がんの治療やその後のフォローを考えると長期的な視点が必要になります。
家族や職場、友人・知人からのサポートが得られるように体制を整えましょう。

わたしの場合は、告知を受けたのが自分の職場(病院)だったので、一番初めに伝えたのが職場の上司を含むスタッフでした。
当時は一人暮らし、両親は地方に住んでいました。
隠し事のないオープンな家族なので、両親へはその日のうちに電話で伝えました。
当日の夜は信頼するパートナーが心配してそばにいてくれました。
入退院の送迎は趣味仲間がサポートしてくれました。

仕事や学業、身の回りの生活のこと、精神面、そして治療のこと。
見方になってくれる人、相談できる身近な人がいることは強みになります。

身近な人こそ早めに報告・相談したほうが良いでしょう。
ちょっとした嘘でごまかすと、結局言いにくくなります。
信頼できる人、仕事や学業と両立する際に関係してくる人へは早めに相談することで、がん治療との生活が楽になります。
特定の人だけに頼りすぎてしまうと、その人が背負いきれなくなり、苦しくなってしまうこともあるかもしれません。

特に精神的な悩みにはピアサポート(同じ境遇や悩みを持つ仲間同士の支援)も有効です。
今では、患者会やブログ、SNSなど、同じ病気の患者さんとつながる機会が増えました。
しかし、SNSなどでのつながりには危うさがあるのも事実。
思いがけずお互いに傷ついてしまうこともあります。
病院で実施しているピアサポートや患者会などの組織が実施している交流会など、研修を受け経験豊富なピアサポーターがいる場所は安心して参加できます。

まとめ

今回は特にがんと診断された直後に知っておいてほしいことをまとめました。
そんなことを言われたって…
直ぐに割り切れるものではないですよね。

「病気」はわたしの個性の一つ、「がん」によってわたしの全ては支配させない。
そう思えるようになるには、時間がかかりました。
しかし、多くのがんサバイバーは同じことを言います。

「がん」にはなったけれども、これまでにはない出会いがあった。
「がん」にはなったけれども、素晴らしい経験ができた。
先人たちが口をそろえて言うのですから、間違いはありません。
いま、目の前に突き付けられている問題は、必ずあなたを成長させてくれます。

人生のどん底、と感じているならば、それより下がることはありません。
上がっていくしかないのですから。

 

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